会場:上野の森美術館
会期:2024年3月14日(木) 〜 3月30日(土) *会期中無休
時間:10:00 〜 17:00*入場は閉館30分前まで
入館料:一般 800円(税込) / 大学生 400円(税込) / 高校生以下無料

タイトル「聲のしないまど(无声的窗)」2024 / ミクストメディア 

巨大ECサイトタオバオを利用して、100ピースの平面作品を制作した。
約1年間中国に滞在した。中国のドキュメンタリーにある大量解雇、労働問題、若者労働者の現状や死など多くの問題がある背景には、我々日本人労働者や生活者の「安く。早く。」が一体どれだけ影響しているのだろうか。

中国の若者は毎年数万人が都心部に出稼ぎに行く。多くの工場では時々事故が起き、若者は命を落とす。知らない街で、家族の電話だけが心の休まりだ。実家に帰るのも一苦労だ。タオバオは中国の人口ほとんどが利用しているであろう巨大ECサイトだ。自身の労働経験によりあらゆるプロダクトを制作するにあたり、このような類のサイトを日本の代理店が利用することを知っている。私はタオバオ上にある十数件のショップ窓口に問い合わせ、例えば中国語と日本語で「ご飯はちゃんと食べれていますか?」「お母さんの鼻歌を覚えていますか?」などと書かれたオリジナルプリント入りのプロダクトをオーダーした。大体のプロダクトはミニマムオーダーといい、100個から製造が可能である。カードやリボン、さまざまなプロダクトに印刷を施した。最後に全てが揃い、メッセージが印刷されたプロダクトをパッケージし、100ピースの作品とした。
見た目は100円ショップのようなチープなものである。しかし、この無言のやり取りの中では、窓口、製造過程、パッキング過程、配達過程、どの過程でも内容を見る労働者がいる。彼らがこれらの印刷を目にしたとき、もし家族に電話をしたならば。起こる可能性のある変化を想像し、制作した。

私は自身のアトリエで一点一点パッキングを終え、最後はVOCA展へと出荷する。
背景にはバブル、労働をきっかけに命を絶った自身の家族の存在がある。今までとは異なった表現形態とはなったが、このような作品のアイデアとチャンスをポーラ美術財団様よりいただいたことに感謝いたします。

ウチダリナ