1990年東京都生まれ。現在、東京を拠点に活動。
東京藝術大学美術学部デザイン科在学中より、和紙を素材とした工芸的で繊細な作品群によって評価を得る。
グラフィックデザインを出自とし、またマテリアルの質感に対する生来の鋭敏な感性に基づくウチダの実践は、和紙と蛾の類似性を探る形態的探究から、写真、映像、インスタレーションといった近年の媒体の拡張にともない、自己と他者、あるいは概念と形態といった相違する、あるいは類似する二者間の距離を巡る、より思索的探究を伴う実践へと発展を遂げている。彼女にとっての制作とは、多様な手段と形式を用いて、二つのものごとの間に横たわる溝を埋める実験的行為である。また、実の父親を亡くしていたという事実を25歳になって初めて知ることになった自身の経験は、その制作活動に大きな影響を与えている。
「高松コンテンポラリーアートアニュアルVol.10」(高松市美術館、香川、2022年)にて展示された《199○年》(2021年)は、亡くした父親との記憶に関わるパブロ・ピカソ作《ピエレットの婚礼》(1905年)と同じ青い色彩を基調とする映像を含んだ立体インスタレーションとして発表され、ウチダのターニングポイントとなっている。
公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団(2020年)助成制度により、2022年中国四川省に滞在。
巨大ECサイト淘宝(タオパオ)上のチャット機能を用いた現地労働者とのコミュニケーションの過程を、出来上がった大量生産品の平面構成によって出力した「声のしない窓」(2023年)は、労働をめぐる社会の歪み、あるいは自己と他者との境界を可視化/非境界化する試みとして、2024年度VOCA展(上野美術館、東京、2024年)に選出。
生から死へと変態(メタモルフォーシス)を遂げるアイコンとして用いられた蛾と人体というモチーフをめぐる和紙の実践は、彼女のライフワークともなっており、距離のある二者間を繋ぎ、その変容の過程に介入して再構築するというウチダの幅広い表現手法に重なる、一層目のレイヤーとして垣間見える。